イヴにモデナ県へ行った目的、それは一度は訪れてみたかったモデナの本場バルサミコの生産者訪問でした。
生ハムの王様クラテッロ、モデナ白牛のパルミジャーノ・レッジャーノを制覇した今、足りないのはバルサミコ酢!!
ということで、向かったのは1871年から四代続くバルサミコ生産者Accetaia Leonardi。
案内してくれたのはレオナルディ家の一族のフェデリカさん。
若いながら流石家族と地元を愛するイタリア人、説明に熱がこもる。
嫌いじゃないです。いえ、むしろ大好きです(笑)
まず通されたのは地上階のバリッカイア(木樽室)と奥にある収穫したブドウを一度温める部屋。
かっ…香りが…予想はしていましたが、入った途端の熟成室の香りがたまりません。
包まれます。
バルサミコには3種類あります。
・Tradizionale(伝統的)バルサミコ酢
・IGPバルサミコ酢
・コンディメント・バルサミコ酢
そしてそれぞれに使用できる材料や熟成期間、ボトルのサイズなど様々な規則があります。
伝統的なバルサミコ酢を名乗るには原料はブドウのみで熟成は12年か25年、ボトルは250mlの指定されたもの。ボトリングはコンソルツィオ(品質保護協会)で行われなければなりません。
レオナルディのバルサミコ酢に使用されるブドウは白ブドウのトレッビアーノが80%、20%は赤ブドウのランブルスコ。
これを60度の温度で25〜60時間熱し続けます。
ただし、温めすぎてはだめ。一瞬でいい状態とやりすぎの状態へ変わるので見極めが大切だそうです。
工業製品は、ここで時間を短縮するために高温にして短い時間のみ温めます。
そうすると焦げ付いた匂いが出てきてしまい違いが出ます。
さらにトロトロ感を出すためにカラメルが足されます。
そして熟成は伝統のバルサミコ酢の12年や25年ではなく、60日間(IGPのマークを得るための最低期間)。
別物ですね。
残念ながらイタリア人ですらこの違いを知っている人は多くないです。
スーパーで安く売られているバルサミコ酢の安い理由はここにあります。
フェデリカさんは言います。
「本物のバルサミコ酢の原料は裏のラベルに”ブドウのモスト”と書かれています。でもそこには質の高い木樽、情熱、忍耐、伝統が入っているの」
ワイン造りとバルサミコ酢は似ているようで違うところがたくさんあります。
・バルサミコ酢はその年のブドウの出来によって左右されない、なぜなら温める時間で濃さを調節できる。
・酸素はワインにとっては敵。バルサミコにとっては友達。
だから樽の上部には通気性のいい布が被せられ、部屋は温度調節されることなくときには窓を開けっ放しにします。
・ワインの木樽は長くても5・6年したら代えますがバルサミコ用の木樽は古ければ古いほどいい。
ここにあったのは1610年の木樽。
衝撃です。400年前の木樽。
はじめに6500リットル用の木樽で13ヶ月寝かされます。
そのあと熟成室に移されます。
地上階から上の階へ上がるごとに熟成期間を経たバルサミコが寝かされています。
レオナルディではバルサミコ酢は五つの樽へ毎年移し替えされます。
蜂蜜のニュアンスを与えるアカシアの木、さくらんぼ感の出るサクランボの木、栗の風味が出る栗の木、バニラ感を出す樫(オーク)、スパイシーな香りを与える杜松(ねず)の木。
熟成の間、中は蒸発などで少しずつ減っていきます。
だからマトリョーシカのように樽はどんどん小さいものへ移します。
はじめ110kgあったブドウは最終的に1kgのバルサミコ酢にしかなりません。
この移し替えの作業の時は錬金術師とも称されるアチェタイオと呼ばれる職人が監督します。
80歳になるレオナルディのアチェタイオは70歳の弟子の二人に指示を出し今も現役でこの繊細な作業を見守っているそう。
杜松の木樽のみで熟成させたバルサミコ酢とサクランボの木樽のみで熟成させた木樽を樽から直接味見させていただきました。
熟成20年もの。
味の違いは顕著です。
杜松の方はスースーしたハーブのようなスパイス感のあるニュアンスがあり喉に来ます。
サクランボの方が丸みがあり酸味も感じるものの果物感が杜松のものよりあります。
「杜松は肉料理に、サクランボはマスカルポーネチーズに合うわ」とフェデリカさん。
最後に味見したのは1918年のバルサミコ酢。100歳です。
「このバルサミコ酢にはレオナルディ家の歩みと伝統が全て詰まってるの」
心して味見します!
100歳なのに残っているフルーツ感と酸味。
聡明な老人のように深みのある濃い何層にも重なる木の香り。
長く口に残る風味。
うーんんん!
このレベルのものに対して美味しいという言葉は安いですね。
直売店で最後お土産を購入。
悩みましたがコンディメント・バルサミコ(品質保護協会でなく自社でボトリング、熟成期間がこちらは決まっていないのでバラエティがあります)の5年ものと15年ものを。
フェデリカさんが「これ是非受け取って」と9年ものをプレゼントしてくれました!
いいいいいのでしょうか、こんなに良くして頂いて。
ありがとう!グラッツィエ・ミッレ!
生産者の元へ伺うと、いつもその裏で働いている人たちに触れることができ、秘密を知ることができます。美味しいな、嬉しいな、ありがとうと思えます。
Accetaia Leonardi
https://www.acetaialeonardi.it/en/
Via Mazzacavallo 6241043
Magreta di Formigine (MO)
tel +39 059 554375
fax +39 059 555487
info@acetaialeonardi.it
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