10月にフィレンツェで行われた大きなワイン試飲会Vinoèヴィーノエで出会ったエンリコさん。
たった30分の試飲でしたが彼の語るワインへの情熱、仕立て、醸造の仕方があまりにも面白く12月、彼に会いに3時間半車を走らせてColli Piacentinoと呼ばれるミラノに近い北エミリア・ロマーニャ地方まで行ってきました。
着いたのはもはや「小さな村?!」∑(゚Д゚)
とでも言いたくなるようなヴィラ。
入り口から煉瓦造りのホールを抜けると中庭から見える時計台は1400年代のもの。
暖炉のある部屋や、夏は結婚式場として貸しているという可愛らしいスペースなどがあります。
そこから見たブドウ畑がこちら。
綺麗に手入れされた丘の向こうまで全部で61haの畑を所有しているエンリコさん1998年から始めたこのワイナリーを今の形にまで作り上げました。
家族代々この土地を受け継いでいたものの92年まではブドウは売っていたそう。
若い頃はあの有名なエノロゴであるコタレッラ氏やレナート氏にも学んだそうです。
丘の向こうに見える村の名前はCalcinaraカルチナーラといいカルチとは石灰を意味します。
そしてこちら側は昔レンガを造る地域、つまりレンガ造りに適している粘土質の土壌がある。
この土地柄に合わせ、石灰質の土壌にはミネラルを与える白ブドウ、粘土質の土壌には黒ブドウを植えています。
白ブドウのマルヴァジア・ディ・カンディアは通常甘みのあるデザートワインが造られるのですが、エンリコさんが造るDonna Luigiaは50%を普通の白ワイン醸造の方法で、40%を皮に漬け込み、残りの10%を12月までブドウの樹にそのまま残しているものを使用します。
12月まで?!なんだそれは?!と最初聞いたときは驚愕しました。
訪れた1週間前まで畑になっていたそうです。
「見たかったーーーーーー!!」と思わず身悶え。(´༎ຶོρ༎ຶོ`)
また、たった0.9haしかないセレクションした区画にみで栽培されたマルヴァジアは収穫を遅くしてフランスのソーテルヌで有名な貴腐菌がついたブドウになるのを待ちます。
このブドウを使用したUNAはなんと13ヶ月も発酵し続けるそうです。
そして1m80cmの高い仕立てで育てられるピノ・ネーロは通常より1週間から10日ほど遅めの収穫。
この収穫を見極めるために彼の醸造所にはラボがあり、毎日ブドウの成分を検査して糖分のバランスやフェノールなどをチェック。
最後はもう指で触るだけで判断するそうでう。
同じように高い仕立てで育てているバルベーラではピノと同じブドウの状態にはならず腐ってしまうので遅くに収穫することはできないそう。試したけどダメだったそうです。
全て経験、全てまず試してみていくつもの実験の後に最良の道を見つけ、それが最終的にワインボトルに収められています。
Ottavo Giornoというワインがあります。
8日目という名前のこのワイン。
ピノ・ネーロで造られる3ヶ月陰干し、圧搾後14ヶ月木樽内発酵、熟成されてから造られる糖分のあるワインですが、甘ったるいところは全くなく、エレガント!
7年、いく通りも造り方を変えても納得いかなかったエンリコさんが8年目にようやくたどり着いた香りと味。7年失敗(彼的には)8年目まで粘ったんです。
研ぎ澄まされたセンスのエンリコさんが8年目にたどり着いた香りと味のバランスが美味しくないわけないじゃないですか!!
旧約聖書の神が世界を創って7日目の次の日、「8日目」という名前がピッタシです。
ただのデザートワインじゃないんですよ。
どこにもない、彼の個性を出したピノ。
ちなみに、ミシュランの星付きで茸と神戸牛の前菜と合わせて出されているそうです。
他のどのワインたちもそうです。
工夫と研究と諦めない探究心。
醸造所の中でも彼の意思はそのまま現れています。
化学的なものは一切使いたくない。そのためには最新の技術を駆使する。
亜硫酸塩をできるだけ添加せず、おいしさを取ってしまうフィルターをしないために、自分で改造した機械も使っています。
オリをとるためにオリ抜き剤を添加したりはせず、温度を一時的に0℃近くまで下げることによりオリが下がり取り除きやすい状態を造ります。
温度コントロールは発酵の時期もとても重要で、発酵が行われている時期エンリコさんは毎朝状態をチェックし、手動で0,5度前後調節を行います。
シャルマン法(タンク内二次発酵)で造る泡ワインへ足すモスト(自社のブドウから取っておいた糖分が残っているブドウの汁)の味見をさせてもらいました。
これだけでも良い香り!
ブドウの状態が全てを左右することを知っているエンリコさんは、収穫するチームの人員にはまず5日間の講習を行います。
300房のブドウに一粒の腐ったブドウを混ぜる実験をしたことがあるそうです。
たった一粒混ぜただけでワインのオリが1ヶ月後には臭くなってしまう。
オリは酸素からワインを守り、味に深みを出す。だからいいオリでなくてはいいものはできない。テーブルに乗せてそのまま食べれる美しいブドウのみで造ればオリは9ヶ月いい香りを放ちます。
だから一粒も許すわけにはいかないと。
地下の木樽貯蔵庫は1600年代の蔵をそのまま使用。天井のレンガの組み方で年代がわかるそうです。
最適の室温と温度が一年中保たれています。
入った途端見えるのは、ずっと憧れていたシャンパーニュ製法(メトド・クラッシコ)で今まさにオリとともに寝かされている泡ワイン。
古い年代のものもあり鳥肌ものです。
樽にも造るワインの種類によってもちろんこだわりがあります。
樽のニュアンスが強すぎないように5・6年まで使用するのですが、数年使用した後一度洗浄するために組み直します。
(輪っかを外せば組み木のようにハマっているだけなのでとることができます)
この後がついているのが分かります。
60万本のワインを造れるだけの畑面積を持っていながら、その半分以下の25万本しか出荷していません。
収量を減らし、質のあるワインを造るためです。
これだけたっぷり案内してくれた最後に
「さぁ、どれを試飲する?」と。
最大級に悩みました(-.-;)
ここでまたエンリコさんが説明してくれるとさらに興味が湧いてしまいます。
選んだのはまず、世界中でも彼しか造っていないらしい90%マルザンヌ種で造られたシャンパーニュ製法の泡。
Olubra
フランスのローヌ地方で有名なこの品種はナポレオンがこの土地へ持ち込んだらしく、ちゃんとこの地域にも根付いている品種です。
フランスでこの品種で泡が造られない理由は泡ワインに不可欠な酸味が足りないため。
この酸味を早期収穫する10%のマルヴァジアで補うそうです。
まさにここでしかできない技。
なんとなんと個性のある味わい!!海藻とバターの風味!
次に味見したのは
Latitudo
Bonardaボナルダ種95%、Syrahシラー種5%
ボナルダはこの地域でよく育てられている品種ですがタンニンが強い品種です。
なんとこのワイン、ワインの王様バローロの2倍のタンニンが。
18ヶ月トンノーという大きめの木樽で熟成。
私たちが試飲したのは2008年もの、10年熟成でしたがまだまだ待てます。
それだけの力があるワイン。
バローロにも負けない香りの爆弾、中身の複雑味、なのにエレガント。なんて絶妙。
「でも、これ造るのやめたの。残ってる分しかないのよ。」
バローロというブランド名がなければ誰も買わないからと。勿体無い!
シャルドネで世界一を獲ったワインも
「造るのやめたの!シャルドネで金賞なんて簡単すぎるでしょ!」
かっこいい!(笑)
そんな風に言ってみたいです私たちも。
この地域は実はボルドーと緯度が一度しか違わないのです。
だから皮肉(?)も込めて、名前が緯度を意味するLatitudoそしてラベルには緯度の絵。
次は試飲会で驚かされた
Dicono Gerardo
テーブルに2本のってる…なぜ?
と思ったら、違う年代を垂直試飲させてくれたのです。
1本目は2008年。
ひれ伏したくなるような香り。
エンリコさんのワインは全てそう。香りが、香りがもぉ…グラスから放つ力がすごいです。
なのに相反するように口に入れると複雑さがありながらなんとも軽やかでエレガントにバランスがある。
黒いさくらんぼ、ローリエ、オレンジピール、イチジク…ずっと味わっていたい。
2本目は年代をブラインド。
先ほどのイチジクがドライイチジクに変化していて、果物たちが濃い土のニュアンスを加えたような、スモークされたような、葉巻のようなハーブ感、森に生えてるマッシュルームも出てきました。
2003年!
15年の歳月とワインの底力。
外はすっかり真っ暗になり吹雪き始め、暖炉横でこの最高のワインを飲んでいる時、到着後に見た時計台の鐘が鳴り始めました。
極上の体験!
エンリコさん、ありがとう。
「次来た時はおすすめのレストランに行きましょう!
まだピノ・ネーロの仕立ても見せるって約束が果たせていないし」
とまた会う約束を交わしました。
日本にも入っているので見かけたら是非手にとってみてください。
Torre Fornello
http://www.torrefornello.it/en/
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亜鉛硫酸塩をあまり含んでいないのはいいですね。
頭痛の原因だからといっても含まないものってあまりないですからね…(*_*;
ナポレオンが持ち込んだOlubraは、底が平らなものですか?
暗殺を恐れて平らなものを好んだと、知り合いのソムリエさんが話してましたから…。
家飲みの赤はボルドーなんですけど、Latitudoも試してみたいです。
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明けましておめでとうございます!
亜硫酸を全く入れないワインもだんだん見かけるようになりましたよ!私たちもすごく興味があります。醸造の段階でも自然に出てくるので、その発生を抑える酵母を選んだりするなどの研究があるんです。
あっ、ナポレオンが持ち込んだのはブドウ品種です。でもそうなんですか?暗殺を恐れて…なるほど〜
家飲みがボルドーだなんて素敵ですね✨ボルドーなかなかこっちでは出会わないんですよ(>_<)
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あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします(^^)/
亜硫酸、自然にでてくるものだったんですか?知りませんでした(^.^)
ナポレオン、ブドウ品種を持ち込んだんですね~(^^♪
暗殺を恐れての話、聞いた時は驚きました。そんな状況で生活しているのか?と…。
ボルドーワインをダースで購入してます(^^;
トスカーナには美味しいワインがたくさんあるから、ボルドーは必要ないのかもしれないですね(*^^)v
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こちらこそ、よろしくお願いします!(^^)
確かに、ナポレオンはすごく神経質に気を使っていたのかなと想像してしまいますね。食卓のフォークとかもなし?!ランプとかも危なそう?!と。
ダース購入はザ・大人買いですね(笑)すごい!
イタリア人は基本「地元大好き」だから(T-T)
この間頑張って手に入れたボルドーのle Puyが想像よりもエレガントでびっくりしました。トスカーナのメルローとは印象が違って感嘆。やっぱり土地の力はすごいですね〜^ ^
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やっぱり土壌なんですね~。日本産のワインは、美味しいという人もいますが‥‥”(-“”-)”
ソムリエさんに教えてもらった、鳥居平今村だと、日本ワインでもいけます(^^♪
普段飲みのボルドーは、もっと安いワインですよ(^^)/
お気に入りのエノテカさんが、銘柄ばらばら12本セットで安く売ってるので、それを購入してます(^^)/
選んでくれる人がいないと分からないので、ボルドーセットならいっか(^.^)的な感じで買ってます(*^^)v
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鳥居平今村!わっ、メモします!甲州にすごく興味があるので鳥居平と書いてあるのを一本手に入れたのですが、多分違いところですね…まだ飲む機会を伺っている一本です。
ボルドー銘柄が違うなんて楽しくなっちゃいますね。ブルゴーニュセットとか欲しいです(≧∀≦)
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鳥居平だったら同じじゃないのかなあ?
でも今村がないと違うのかもしれないですね。すいません、詳しくなくて( ;∀;)
ブルゴーニュセットいいですね~(^^♪
白はブルゴーニュが好きなんですが、ブルゴーニュってちょっと高いですよね(>_<)
ソムリエさん曰く、「投資に使ってる人がいるから、高い」と言われて、そうなの~( ;∀;)って感じでした(-_-)
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いえ、いろんな情報とっても嬉しいです♪
ベタと言われそうですがピノネーロ好きなんです(^^;
この間、ブルゴーニュの白でアリゴテ種飲みました!美味しかったぁ。いいですよね♡
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ピノネーロ、アリゴテ、今度試してみます(^^)/
ブルゴーニュはシャルドネっていう固定概念でしたが、調べたら、ブルゴーニュの生産者さんはアリゴテを飲んでるっていう記事がありました。
生産者さんたちは飲むってことは、美味しい証拠ですね(*^^)v
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